先端ベンチャー企業対談 WINフロンティア 板生研一社長

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今回は、WINフロンティア株式会社代表取締役の板生社長にお越しいただきまして、当学会会長である明治大学の高木教授と、日本知能情報ファジィ学会が目指している新しい学会の形とIT先端ベンチャー企業様との連携の可能性についてというテーマで対談をお願いしております。

WINフロンティア 板生研一
板生 研一
WINフロンティア株式会社 代表取締役社長
一橋大学法学部卒 英国ケンブリッジ大学経営大学院
経営学修士(MBA) 米国公認会計士
ソニー株式会社、外資系コンサルティング会社KPMG、
株式会社インフォマティクスを経てWINフロンティアを設立

 

 
司会 まずは板生さんから会社の紹介をお願いいたします。

ウェアラブルセンサ板生社長(以下敬称略) 私が代表を務めますWINフロンティアという会社は、心拍のゆらぎから自律神経を測れる超小型・軽量の生体センサを使って、「緊張・興奮」(交感神経指標)と「リラックス」(副交感神経指標)のバランス割合を可視化する、「Lifescore」というサービスを提供しております。自律神経の常時計測は、デバイスの制約上、これまで難しい部分がありましたが、弊社Lifescoreサービスにて使用している生体センサはこれを可能にしました。

高木会長(以下敬称略) これは胸にずっと貼りっぱなしで生活するものですか。お風呂に入るときはどうするんでしょう。

板生 必ずつけていなければならないわけではなく、自分のコンディションを測りたいときに付ける感じです。お風呂に入るときだけは外していただくことになります。

自律神経指標グラフいま、私が実際にセンサを装着しておりまして、無線でパソコンに差している受信機にデータを飛ばしているのですが、心拍の波形、心拍数、体表温、体の傾き(3軸加速度センサによる)に加え、自律神経が表示されています。簡単にご説明すると、グラフの赤いほうが交感神経の活動値、つまり緊張度合、グラフの青いほうが副交感神経の活動値、つまりリラックス度合を表しているのですが、お医者さんが言うには、両者がほぼ均等にバランスしているのが望ましいとのことです。しかし、現代人の多くはこの赤のほう(交感神経)が過剰に優位であることが多く、なかなかバランスするのは難しいようです。ただ、日中は交感神経が優位な人も、睡眠時は逆に副交感神経が優位になることで、一日のバランスをとっています。いまはリアルタイムで表示していますが、弊社のLifescoreサービスでは、センサ内蔵のメモリーにデータを蓄積して、あとで解析するという使い方をします。

 WINフロンティアのWINという名称は「Wearable Information Network」(ウェアラブル・インフォメーション・ネットワーク)の頭文字の略でして、2000年に東大発のNPOとして発足したNPO法人WIN(ウェアラブル環境情報ネット推進機構)がその母体となっております。このNPO法人をベースに10年ぐらい小型のセンサを中心とした、身につける情報機器に関する技術を蓄積していったという背景があります。また、このNPO法人では、「人間情報学会」という学会も運営しておりまして、様々なウェアラブル健康管理機器を使った研究・実験及び3か月に一度の定例会において、研究成果発表を行っております。たとえば、自律神経とビジネスマンのパフォーマンスの相関関係に関する研究、あるいは姿勢の良し悪しが自律神経あるいはパフォーマンスにどう影響するかの研究などです。この定例会を通じて、様々な企業の方や大学の方と交流する機会を持っております。

 これまでの実績としては、総務省のICTプロジェクトにおける高齢者の健康管理プロジェクトや大学との共同研究、企業でいうとエアコン、化粧品、サプリメント、消費財等の効果測定に関するプロジェクトなどがあります。最近はプロスポーツ選手(ゴルフ、野球)に関する測定プロジェクトも増えております。総務省のICTプロジェクトというのは、千葉県の過疎地域の高齢者の方を対象にして半年間かけて、遠隔での健康管理に関する研究を実施しました。今年の2月よりセンサの量産化が実現できたので、個人向けに安価なかたちでどんどん弊社のLifescoreサービス提供していきたいと考えております。

司会 板生さん、なぜこのパラダイムに突っ込もうと思ったのかを教えて下さい。

板生 弊社の企業コンセプトですが、定期健康診断のときだけでなく、日頃から手軽に健康チェックをしていくことで、予防医療の促進、医療費高騰の削減などに貢献していきたいと考えています。それと、日本には健康産業において、様々な強みがあり、世界に対してはまだまだ競争力があると思っていますので、海外にも展開していきたいと考えています。

 なぜ私がこの世界に入ったかなんですが、私は以前は大手のエレクトロニクスメーカーにおりまして、最先端のデジタル家電の事業企画、マーケティング等に携わっておりましたが、テクノロジーをもっと直接的に人に役立てる部分が欠けているなという思いがありました。このセンサ技術に初めて触れたとき、これは人間の健康促進に直接的に活用できると直感しましたし、とくに昨今、メンタル不調者が増えているという時代背景もあって、テクノロジーを通じて世の中の役に立てる大きな可能性を秘めているところに魅力を感じたのがきっかけです。

明治大学 高木友博 教授
高木 友博
日本知能情報ファジィ学会 会長
明治大学 理工学部 情報科学科 教授 工学博士
明治大学ソフトコンピューティング研究所 所長
IFSA Fellow.
IEEE Computational Intelligence Society Fuzzy Systems Pioneer Award.
Takagi-Sugeno Model提唱者。近年は状況に依存して変化する言葉の意味表現に関する基礎研究とWebインテリジェンスの応用研究とを進めている。

 
司会 では高木先生から、ファジィ学会の目指しているものについてご説明してください。

高木 さきほど、学会を電子基盤の上に乗せていくことと、コアな技術をマルチにしていくというお話しをさせていただいたんですが、もうひとつ、学会として大事な役割を最近感じています。それは,企業との連携を学会が積極的にコーディネートすることです。

 普通の学会というのは、論文誌を出して発表会をやって終わり、みたいなところもありますので、そういう会員サービスみたいな概念はあんまり無いと思うんですね。我々も試行の段階でまだ出来るとも限らないし、学会として正式にうたっているわけでもないんですけども、思いとしては産学協同に向けたマッチメイク機能を当学会の価値として打ち立てたいと思っています。

 学会発表自体に産業界のひとが参加するというのはあったんですけども、学会としては発表会を主催するだけで、それ以上に協業に向けたサービスは心がけないんです。そこで私達の学会はもうちょっと踏み出して、もっとマッチメイクを図っていきたいと思っているし、それが新しい学会の姿になりうると思っています。

 例えば、企業は技術シーズを特許とか論文とかで見ますよね。例えば研究成果を動画にとって、それをSNSにアップしたとしたら、研究成果が直感的にすぐ見てわかるんです。私も論文を読むのがある意味本職ですけど、超めんどくさくて(笑)頼まれてもなかなか読めません。それよりは動画でぴゅぴゅっと動くと、あ、これ使えそうだなと一瞬にしてわかる。そんな風に,SNS電子基盤があるおかげで、通常は遠い関係にある,シーズ側とニーズ側とのマッチメイクを,上手く図れると思うんです。

 我々のSNSは,学会に必要な機能をしっかり考えた結果,設計されたものです.単に「SNSの時代だから我々も作りましょう.」という順序ではなく、学会として何をすべきなのかというところを一生懸命考えた結果、電子基盤の必要性や,それが果たすべき役割が見えてきて、それが結果的に学会SNSという形に結実しています。投稿した情報がGoogleに拾われてどんどん外に出ていくというところなどは、一般のSNSにはないすごく大きなポイントだと思います。

 それまで学会では、人の研究成果を見るのに課金し、自分の研究成果を出すのにも課金する、そういうことで学会を維持してきました。しかし,最近は学会に入ってなくても、なんらかの電子的手段で情報は手に入る様になって来ています。それよりも会員にとってクリティカルなのはそこで発表することで、権威をもって世に通知できるというのが学会の存在価値ですので、思い切ってもう一方の半分を捨てることによって、学会のあり方をもっと強化して行こうとしています。

板生 ソーシャルメディアの登場とともに学会をオープン変えていくというのは、従来の学会のイメージとは全然違いますね。私たちもさきほど紹介した人間情報学会という場でいろいろな先生や企業の方に講演していただいておりますが、そのノウハウをどう活用していくかが課題としてあります。学会は、日常であまり接点のない人との接点を持てる場ですが、各人のニーズに最もマッチした人との接点をつくる上では、ソーシャルメディアの果たす役割は非常に大きいと感じます。

明治大学 高木友博高木 もうひとつ思うのは、大学の先生というと、今まで委託されて、つまりお金をもらってそのぶん研究して返しますというのに慣れてしまっているんですよ。なので、新しいビジネスを立ち上げる際に、お金をもらえるかどうかもわからないけど一緒にやってみましょう、というスタンスにあまり慣れていないんですね。

 先が見えない領域を追いかけているときというのは、企業側からみてもお金が保証できないわけですので、両方から未知なものに向かってリスクテイクしていくという形があってもいいと思うんです。どんどん研究者側がリスクに乗り出して行って、新しいことにチャレンジしていって、うまくいったらそこから初めて考えるという、そういう順序があっていいと思います。しかしそのためには、ロングテールのなかの様々なニーズとシーズから、適切な組み合わせを見つけ出していく必要があります。それにSNSの様なソーシャルメディアを活用しようと考えているのです。

司会 ベンチャー企業側の板生さんからみて、大学とのコラボレーションのメリットをお聞かせください。

WINフロンティア 板生研一板生 我々がいまやっているビジネスでは、世の中になかなか無いデータ(24時間の自律神経データ)を蓄積しております。ここで収集したデータは、量的に膨大になってくるのですが、見る人が見れば様々な見方ができるという意味で、学術的にもビジネス的にも大きなポテンシャルがあると思っています。現在、研究目的でセンサを購入していただいている大学の先生や大学院の学生の方と一緒に解析をしようという取り組みを徐々に始めているところで、解析の手法や我々にない新たな着眼点を持った人たちへの興味というのは非常に強いものがあります。企業はどうしても目の前の収益を追っていかないとならないので、近視眼的になりがちなのですが、大学の方たちは中長期的に、同じ物を違う視点からみていただけます。自分たちが気づかないことを気づかせてもらえるというメリットがあると思います。

高木 そのときはお金の授受はなくて、その先生の研究室もネタが出来て助かる、ということでしょうか。

板生 そうですね。センサで測定したデータを解析した結果を大学側で論文化していただき、アカデミックの発展に役立てていただくとともに、弊社としては、そのような論文をサービスのエビデンスや、場合によっては、セールスツールとして使わせていただくこともありますので、そういったお互いのギブアンドテイクになっているのではないかと思います。

高木 いままでの私の企業との共同研究の経験から言うと、大学側は、いまのお話しのようにゼロから何の見返りも期待せずにそのデータに取り組むということを始めるべきだと思います。それで大学の人間にもメリットがあると思います。それによって、日々の研究活動を充実させていくことによって、結局その研究室のチカラを蓄えていける、成長していけるわけですよね。もっと未知の協業形態にも大学の人間は一歩踏み出すべきだし、それが研究室の発展に充分メリットがあると思います。

司会 企業が今かかえている生のニーズと、今日取っている生のデータを叩いてみる、というのは大学の研究室にとって貴重な機会なのではありませんか。

高木 プラス面としては,普通は生のデータは機密ですから手に入らないんですよ。例えば私も企業と共同研究して来ましたけども、その内部データは機密保持契約を結んでもなかなか会社の外には出てきません。今うかがって驚いたのは、研究室が生のデータをそのままもらって解析できるということで、それはすごいメリットです。マイナス面としては、どうしても企業は直近の成果を追いかけなければならないので、取り組みから成果までが短時間になってしまうんです。ベンチャーならなおさらです.しかし大学は商品開発がメインになってしまうと,しっかりした研究ができなくなってしまう。そこは企業側から歩み寄ってもらって、しばらく待っていただく時間的余裕さえ持っていただければ、両者のプラスマイナスが相殺されて協業が成立すると思います。

司会 では、最後になりますが、本日の対談のご感想をお願いいたします。

高木 今日はベンチャー企業からみたときの学会へのニーズと、学会が果たすべき役割のチャンスみたいなもののヒントとして,非常に貴重なお話しをうかがえたと思います。学会の活動に反映していきたいと思います。ありがとうございました。

板生 私の方は、学会というものに対して、「敷居が高い」というステレオタイプのイメージがあったのですが、今日の対談で貴学会が非常にオープン化された組織を目指していらっしゃることを知り、大変感銘を受けました。今日は本当にありがとうございました。ぜひ今後、様々なかたちでコラボレーションをさせていただけると嬉しく思います。

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